寄稿コーナー

「福生病院事件第一回公判後集会に参加」

吉川さんに精神障害者権利主張センター・絆への原稿を
なんくるブログにも寄稿して頂きました。
「福生病院事件第一回公判後集会に参加」
吉川健明(精神医療医療当事者、医師、絆会員)

 2018年夏、東京福生市立病院で血液透析を受けていた40代の女性患者が、手首からのシャント(透析の経路)が詰まったため新しい経路を首から作り透析を継続するかそれとも透析を中止するかを提示され、いったん透析中止を決め、「透析離脱証明書」へのサインまでした。しかしすぐに体調が悪くなり、再度福生病院に入院して、透析再開を願ったが受け入れられず、鎮静剤を点滴され亡くなってしまう。残された遺族が病院を相手に民事訴訟を起こし、先日(7月22 日)第一回口頭弁論が開かれ、そのあとの報告集会に参加してきた。

 被告(病院側)の反論が驚くべきもので、「女性が手術(シャントが詰まったため首からのカテーテルの経路をつけること)を拒否したためで、病院側に責任はない。透析を絶対しなければならないというのは患者の自己決定権を否定するパターナリズムで古い考えだ」とまでいう。
 さらに驚くべきことは、「透析をしない選択」という考えである。これは日本透析学会が、2020年4月に発表した「(透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての)提言」に持ち出した概念である。これまで腎不全に対する療法は、腎移植と血液透析、腹膜透析の3種だったがこれに加え、保存的腎臓療法(CKM、conservative kidney management)があるというのだ。CKMを選択すると数週間で死に至るがそこを人生の最終段階とせよとまでいう。なんのことはない「無治療で過ごし死ぬのを待つ」というのだ。これでどうして新しい治療概念というのか理解が難しいが、この福生病院事件でも女性に対し、「透析離脱したから」=「保存的腎臓療法を選んだ」=「人生の最終段階を選んだ」と誘導強制して、透析再開も緊急透析の導入の検討すらしていない。

 そもそもこの女性の腎臓の状態や身体の状態をどう評価し、どのようにすれば日常生活を十分過ごせるかということを考える医療の基本がすっとばかされている。もともとこの女性はただシャントが詰まっただけで、経路をカテーテルに変更するかどうかが問題だったはずだ。そこで女性が心理的困難などからいったん断っただけである。ところが病院側はろくに説得もせず「透析離脱証明書」を持ち出しサインさせている。女性はかかりつけの透析クリニックを受診すると「透析再開しなければだめだ」と説得される。そして5日後容態悪化で福生病院に駆け込み、透析再開を願っても、離脱したのだからと拒絶されてしまう。この間冷静に女性の腎臓及び体調を評価していたのは透析クリニックの医師で、福生病院は一方的に「透析を離脱した」「手術を拒否した」と突き放し、透析再開を願っても「精神状態が混乱した状態」と、医学的評価をせず、緊急透析の検討もしていない。

 裁判は始まったばかりで、これから争点が浮き彫りにされると思うが、この事件の本質は、やはり新自由主義のもとでの医療の腐敗と非人間化であり、医師医療者が屈服し、患者殺しに加担したことであろう。この福生病院でパワハラ事件が起きているとの新聞報道があり、それも偶然ではないだろう。新自由主義のもと、医療が営利事業に転化していく一方、社会に役に立たないと一方的にきめつけ命の選別をする優生思想が跋扈してきている。さらに医療観察法や精神病院での隔離拘束の強化など治安管理の立場に医療が立つようになってしまった。特に、治らない患者は死んだ方がいいという乱暴な優生思想の考え方は、ナチスドイツの時代に、ユダヤ人虐殺に先立って行われたT4作戦による障害者と病者の虐殺に続くもので、戦後の日本の優生保護法による障害者、病者の断種(1万5千件以上にのぼる)へと連なるのだ。この新自由主義の医療の民営化、営利主義化の裏表でこうした優生思想による患者殺しが激化している。

 この裁判の報告集会の翌日、驚くべき事件が発覚した。京都の難病の女性に対する嘱託殺人を遠方の医師が報酬まで受けと行ったことがわかり逮捕されたのだ。今コロナ情勢でこうした優生思想による患者殺しや民衆を管理抑圧する医療が蔓延する一方で、病院自身の経営が行き詰まり、医療労働者の一時金すら支払えない事態が続出している。東京女子医大の看護師にこの夏の一時金が支給されず何百人もの職員が一斉に辞表を出したり、少人数だがストライキに立ち上がる病院の労組もあらわれた。
この新自由主義の医療破壊、人間破壊の攻撃に屈服し、文字通り魂を売り渡して患者殺しに加担してしまうのか、それとも患者や家族、地域の人とともに困難の中連帯して生きる立場に立つか。今その分岐点に私たちは立っているのだと思う。優生思想と分断を突き抜ける連帯と団結を勝ち取ろう。

星野国賠訴訟 第二回口頭弁論開かれる。

(吉川さんにレイバーネットへの原稿をなんくるブログにも寄稿してもらいました。)
星野国賠訴訟 第二回口頭弁論開かれる。
 
  星野文昭さんを取り戻そう 東京連絡会 吉川健明

 先日8月27日、東京地裁にて、星野文昭さんの獄死を許さない国家賠償請求の第二回口頭弁論がひらかれました。1971年11月14日、沖縄返還協定粉砕闘争のデモが渋谷で闘われ、その時警察官一名が死亡しました。星野文昭さんは、そのことで殺人罪をでっち上げられ、無期懲役の刑を受け、44年間も獄中にいました。昨年、肝臓癌であることがわかり、東京の昭島の東日本成人矯正医療センターで摘除手術を受けましたが手術が失敗し無念の死を遂げました。その責任を追及する国家賠償請求訴訟を文昭さんの意志を継いだ妻の暁子さんら家族が徳島刑務所と東日本成人医療センターを相手に起こしています。
 裁判は午前10時半からはじまりました。6月の第一回口頭弁論で、国の違法行為を弾劾してきたことに対する被告国側の反論が準備書面という形で8月初めに示されていました。国の準備書面は訴状に対するケチ付けと揚げ足取りに終始し、国賠法一条一項の違法行為に当たらないと強弁するだけのもので、星野さんがなぜ亡くなったかも明らかにせず、お悔やみの言葉一つのべない不誠実なものです。
 2018年8月に文昭さんが腹痛をおこして倒れたことを「転倒した事実はない(カルテなどの記載がない)」という愚にもつかない詭弁を弄するだけで、検査が遅れがんの発見が遅れた責任を塗り隠そうとしてるのです。
 この日、弁護団は、準備書面に対する求釈明を一つ行いました。昨年、2019年3月1日、ようやく行った文昭さんへの腹部エコー検査で肝臓に腫瘤が発見されたのに、本人にも家族にも弁護団にも隠し、さらに当時文昭さんの仮釈放の審理を行っていた四国更生保護委員会にも文昭さんの体調のことを知らせませんでした。
 この3月1日から4月18日の47日間、文昭さんが東京昭島の成人矯正医療センターに移送されるまでの間、何が行われていたのかを弁護団は追及しました。
 この裁判は文昭さんの無念を晴らすための医療国賠であると同時に、新自由主義のもとで深まる医療の腐敗を暴く闘いでもあります。新自由主義のもと医療は露骨な金儲け主義、格差拡大、患者殺しを深めています。相模原事件や福生病院事件、京都での難病患者への医師による嘱託殺人など医療自体が新自由主義に屈服するなかで、獄中の医療もでたらめになってきています。
 今日のこのコロナ大流行と経済の悪化の中で、医療格差の拡大と患者殺しがますますひどくなる中、この星野文昭さんの医療国賠の成否はとても重要です。裁判は始まったばかりです。今後ともご注目を。

6月22日星野文昭さんの獄死・医療過誤を問う 第一回口頭弁論行われる。ー2ー

6月22日星野文昭さんの獄死・医療過誤を問う
第一回口頭弁論行われる。ー2ー 
星野文昭さんを取り戻そう東京連絡会 医師 吉川健明

 文昭さんのいとこで長年文昭さんと暁子さんを支え続けている星野誉夫さんから、これまでの文昭さんの闘いの軌跡が語られた。
 最後に星野さんとともに渋谷の闘いを担った大坂正明さんを支援する仲間から発言があった。大坂さんは現在東京拘置所にいるが、鼻茸(鼻ポリープ)を患い呼吸も苦しいことと耳にまで影響が及び聴力の障害が出てきていることが報告されて、にもかかわらず東京拘置所は手術の要請を拒否していることが弾劾された。大坂さんへの医療を保証することと生きて奪還すること。そのことは星野さんのこの医療国賠の闘いと一体であることが訴えられた。

 許しがたいことに警視庁の公安警察が朝から多数裁判所を威嚇するように取り囲み、中には裁判所の中にまで入り込んで傍聴券を求める列にまで公然と並ぼうとしていた。こうした事態は憲法で保障されている司法の自由と独立、公開の原則の侵害である。戦前の治安維持法弾圧の下、特高警察は、弾圧された労働者の裁判をも監視し、拷問で虐殺された小林多喜二氏の葬儀(築地小劇場でおこなわれた)をも監視・弾圧した。今また獄中医療によって殺された星野文昭さんの死の責任を問う国家賠償請求訴訟を第一級の監視弾圧対象とすることは許すことができない。権力に楯突くもの、歯向かうものへの弾圧だけでなく、刑事施設で行われる医療の妥当性を問う裁判にも介入することは司法の崩壊につながるし、戦争と憲法改悪の先取りだ。
 第一回公判はこうした弾圧を毅然と跳ね返し、原告で連れ合いの暁子さんを先頭に闘われた。

 星野国賠は、文昭さんと暁子さんの無念を晴らす闘いに加え、日本の刑事施設の医療を変革する闘いであり、入管施設や医療観察法施設などでの医療放棄、医療過誤を告発し改革する闘いにも連なっている。多くのみなさんのご注目を。

次回公判予定
2020年8月27日午前10時半 411号法廷。

6月22日星野文昭さんの獄死・医療過誤を問う 第一回口頭弁論行われる。ー1ー

6月22日星野文昭さんの獄死・医療過誤を問う
第一回口頭弁論行われる。ー1ー
          
          星野文昭さんを取り戻そう東京連絡会 医師 吉川健明

6月22日、コロナ情勢で開廷が遅れていた星野文昭さんの獄死を問う国家賠償請求訴訟の第一回口頭弁論が東京地裁で行われた。梅雨の本降りも雨を跳ね除け裁判所の開門と同時に多くの人が傍聴券を求めた。

第一回口頭弁論は、まず星野暁子さんの意見陳述から始まった。裁判長も身を乗り出して聞き入る中、暁子さんは切々と文昭さんへの思いを語り、徳島での医療放棄、検査の遅れ、そして、医療センターでの術後の放置という動かしがたい医療虐待の事実を述べ、獄中医療の変革を訴えた。

 原告側の藤田主任弁護士は、訴状の要約を述べながら、文昭さんに2018年、数度にわたって面会していく中、みるみる痩せていったことを語り、徳島刑務所の対応の遅れを弾劾た。そして同時に進行していた四国地方更生保護委員会への仮釈放の申請で重要な文昭さんの健康状態についての刑務所側からの情報提供がなかったことを上げ、その不作為を弾劾した。さらに医療センターがおよそ巨大な肝臓がんの切除など高度の外科手術を行える能力がないのに手術を強行し、さらに術後の放置をしたことを簡潔かつ具体的に述べた。

 国、法務省は、2月に訴状が提出されてから何も反論を示せなかったが、先日、原告側に「棄却を求める。理由はおって通知する」という答弁書をだし、当日も8月7日までに追加意見書を出すことをようやく表明した。次回の裁判は8月27日午前10時半に決まった。

 第一回公判ののち記者会見が行われた。記者からは、星野さん以外の獄中医療の被害者について質問があり、北海道の月形刑務所で亡くなった受刑者でロックミュージシャンの遺族が国を訴えている例が紹介された。

 梅雨の強い雨を押して関東近辺から支援者が60名以上集まり、傍聴席もコロナ情勢を理由に制限される中、第一回の医療国賠公判が闘われた。裁判所の外では、雨の中街頭宣伝が行われ、国の不法を許さない怒りの団結が満ちていた。

 午後から総括の小集会が弁護士会館で行われた。4人の専任弁護士に加え、古くから星野さんの再審を支援してきた小林博幸弁護士が徳島刑務所の医療虐待を怒りを込めて告発した。傍聴できた支援者の感想が語られ、国賠ネットの土屋翼さんからは国賠訴訟の勝利の困難さについて訴えがあった。また別の支援者から刑事施設での医療虐待の例として、1975年に大阪拘置所で起きた鈴木国男さんの虐殺(抗精神病薬を注射され、その副作用で凍死しだ)とそれに対する国家賠償請求訴訟が勝利したこと語られた。刑務所医療がその時から変わってないと弾劾された。

 5月30日、星野文昭さん逝去一周年集会行われる。 6月22国家賠償請求訴訟第一回公判にご注目を。

 5月30日、星野文昭さん逝去一周年集会行われる。
6月22国家賠償請求訴訟第一回公判にご注目を。
吉川健明(星野文昭さんを取り戻そう東京連絡会 医師)

 5月30日、星野文昭さんが亡くなってちょうど一年のこの日、逝去1周年の集いがもたれました。新型コロナ感染症の世界的大流行の影響で、5月24日に予定していた集会の会場が休館となり、人数を制限したうえでの集いとなりました。

 集会入り口では体温測定や手指消毒など感染対策を施され、座席の間隔も空けての開催となりました。司会から、世界的なコロナの大流行と黒川検事長問題で安倍政権は大変な危機にあるなかで星野さんの国家賠償請求訴訟は大変重要になっているとアピールがありました。文昭さんが亡くなった後のこの一年を振り返るDVDが流され、次に遺族の暁子さんが、文昭さんへの思いと国賠への決意を述べました。「6月22日に東京地裁において第一回口頭弁論が開かれる。この一年の証拠保全とその分析を通して、星野さんへの医療放棄、医療過誤と医療虐待の実態が明らかになりました。徳島刑務所での肝臓がんの診断の遅れ、昭島の医療センターでの術後の放置などどれをとっても許せないことで、必ず国に責任を取らせる」と訴えました。
 次に国鉄闘争全国運動の金元重さんが韓国での状況をまじえ訴えました。さらに冤罪犠牲者の会の十川(そがわ)正さんが、星野さんの国賠闘争は絶対勝たねばならない裁判でそれが全国の冤罪犠牲者を励ますことになること、そして再審法の制定ででっち上げを行った警察官や検事を処罰することが重要であることを訴えられた。十川さん自身、1971年11月渋谷に高校生のとき行ったことがあること、その時渋谷は機動隊員で埋まっていてまるで機動隊の街だったことを昨日のことのように覚えていて、それを突破してきた星野さんはリーダーとして優れていたんだろうと語りました。婦人民主クラブ全国協議会の三浦正子さんが、星野さんの死刑求刑反対署名から運動をはじめたことを語りました。大坂正明さん救援会準備会の小泉義秀さんが自分が大坂さんと年は違うが同郷であることを語り、大坂さんを生きて奪還するためにも星野さんの国賠と再審を勝たねばならない。と訴えました。革命的共産主義者同盟の代表と三里塚現闘、全国の星野救援会から大阪、茨城、福島、埼玉からこのコロナ危機の中で星野さんの国賠闘争の重要性が語られました。共同代表の狩野満男さんが、今後の国賠闘争をどのように闘うか、新たな星野闘争の方向を語り、集会を終えました。
 コロナ情勢の緊迫と黒川検事長問題は、この星野さんの闘いにとって非常に重要です。黒川こそ法務省の事務次官と東京髙検の検事長を歴任する中、星野さんへの獄中弾圧の張本人であります。だいたいかけ麻雀をして懲戒処分にならない戒告で退職金を受け取る一方で、星野さんをはじめとした政治犯への弾圧に手を染めていた全く許しがたい人物です。こういう輩を検事総長に無理矢理するために定年延長を閣議決定し、さらにそれを正当化するために法律すらねじ曲げようとしたのだからとんでもないことです。そういうなかでこの星野さんの国賠訴訟は事実と正義を明らかにする極めて重要な闘いです。ぜひ多くの人の注目を。

国家賠償請求訴訟第一回口頭弁論
 6月22日には、東京地裁721号法廷
 9時 裁判所前集合 宣伝活動
10時半 開廷
    終了後記者会見
11時30分 裁判所前で宣伝活動
13時報告集会(弁護士会館5階502会議室)
星野さん

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人間平等!

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