手をつなぐ2015年8月号、9月号にイギリスの意思決定支援のレポートがありました。柴田氏は障害者権利条約からすればイギリスのあり方も問題があると「意思決定支援と法定代理制度の考察」で示しています。社会保障審議会の意思決定支援ガイドラインへ案へも、イギリスの意思能力法を引用しないことが提言がされています。どんなに重い障害があっても法的能力を有するならば、刑法39条の心神喪失、心神耗弱の規定は否定されるのか?様々な疑問が出てきますが、障害者権利条約の内容をしっかり把握するための手立てとして、ぜひ読みましょう。(林)
近代市民社会の成立以来、判断能力に困難のある人の法的能力は不完全とされてきたが、障害者権利条約12条は、判断能力が不十分な障害者も、常に法的能力をもつとした。
イギリス意思能力法は、「意思決定支援」を考えるときに、大変参考になる法律であるが、「意思決定支援」の範囲と、「意思決定支援」をつくしても本人が独力で意思
決定できないときの対応が、イギリス意思能力法と障害者権利条約では、異なる。
イギリス意思能力法は、本人を「無能力」として、「意思決定支援」ではなく、他人
である「意思決定者」が「最善の利益」原則により代行決定する。
権利条約は、本人に「法的能力」があるとして、「意思決定支援」によって、法的能
力の行使を支援するよう求めている。
2015年9月8日の社会保障審議会障害者部会で示され「意思決定支援ガイドライン
(案)」は、イギリス意思能力法を引用している。
しかし、イギリス意思能力法からの引用部分は「代行決定」の論理を用い、その他の部分は判断能力の困難な障害者への「意思決定支援」を進める内容となっているため、「代行決定」の部分のみの削除は可能であろう。
権利条約12条による意思決定支援の試論について、ぜひご意見をいただきたい。
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柴田洋弥(しばたひろや)
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