書評・本の紹介

手をつなぐ 2020年6月号 特集 新型コロナウィルス、その影響

6月011手をつなぐ 2020年6月号
特集 新型コロナウィルス、その影響

新型コロナウィルス感染症の流行は、障害を持つ人たちにより大きな影響をもたらしています。手をつなぐ6月号の特集は、新型コロナウィルス感染症の基礎知識や、感染予防、流行がもたらしている影響等々、かなり包括的なものとなっています。

本人・家族・支援者の現状報告は全国からの声が掲載されています。事業者は移動支援、児童発達支援、放課後等デイ、就労支援、通所事業、居住系支援、さらに特別支援学校まで、本当に大変な現状が報告されています。

日の出町やあきる野市地域でも、地域自立支援協議会や社会福祉協議会やその他の福祉ネットワークが、自粛期間中に十分な情報共有ができなかったという声があります。集まる会議が開催できなかったから仕方がなかったのでしょうが、ネットワークを持たない小規模のNPO法人や株式会社が運営する事業所が情報不足の中で大変不安な思いで運営していることが、日の出福祉園にも伝わっています。入所施設はどうしても施設の中だけで業務を完結しがちですが、看護師の配置もないグループホームや就労系事業所、訪問系事業所などを運営する法人の厳しい現状を、私たち職員はしっかり知っておく必要があります。

今号の特集は、新型コロナウィルス感染症がいかに多大な影響を知的障害福祉にもたらしているかを思い知らされます。福祉は知的障害分野だけではありません。身体、精神、高齢、母子、児童、生活困窮者、路上生活者・・・、新型コロナウィルスが人間の生活にもたらした影響は計り知れません。それは今なお現在進行形です。大変な気持ちになりますが、私たちがぜひ読むべき特集だと思います。(林)

さぽーと2020.5月号 触法障害者への地域生活支援(2) ―その実践と課題―

2020.5さぽーと2020.5月号
触法障害者への地域生活支援(2)
―その実践と課題―
5月号の続編で紹介されている具体的事例は大変考えさせられます。

地域定着支援センターの課題として再犯防止をどのように考えるかが問われるとし、「福祉の刑事司法化」への抵抗が大きいことが記されています。どうして抵抗が大きいのか、起訴猶予段階での福祉プログラムについてなど、もう少し具体的に記してほしかったとも思います。

多機関・多職種連携が障害当事者の監視にならないような支援を考えることは、この問題の大きなテーマだと思います。それには、支援関係における主体の明確化が必要だと思いました。生きる主体は障害当事者であって支援者ではないこと。支援主体は支援者側であっても、当事者は操作の客体ではないこと。対人援助の基本的な考え方が、罪を犯した障害者の支援にも再確認されるべきだと思いました。「再犯防止」の主語が支援者であることの自覚が、支援者側に大切だと思います。

また、この問題は福祉サイドから福祉の文脈だけから考えられるべきではなく、国家権力や刑事司法のありかたについての歴史的な経緯を学ぶ必要があります。戦前の治安維持法や思想犯保護観察法、そして戦後の保安処分への動きと反対運動など、国家権力による管理統制と人権思想との対立の歴史についてです。

この特集に心神喪失者医療観察法が取り上げられたように、知的障害福祉の範疇だけでは考えられないのが「触法障害者」問題です。罪を犯した障害者の支援は知的障害、身体障害、精神障害などの障害種別を超え、路上生活者支援や貧困問題と繋がっています。この仕事を知的障害者福祉事業所での業務内だけで想定することはできません。この問題に向き合えば、他領域の問題を知り学ばざるをえません。さぽーと編集部には、今後もこの問題を継続して掲載して、当事者、弁護士、保護司、社会復帰調整官、医師、看護師、福祉施設職員など様々な立場からの意見を取り上げてほしいと切に思います。(林)

触法障害者の地域生活支援(1) ―リスク管理の視点から― さぽーと 2020.3月号 日本知的障害者福祉協会

好廣003触法障害者の地域生活支援(1)
―リスク管理の視点から―
さぽーと 2020.3月号 日本知的障害者福祉協会

精神医療・福祉分野と違い、知的障害福祉分野では心神喪失者等医療観察法が取り上げられることがほとんどありません。かつて、日の出福祉園の管理者は触法障害者支援に前向きでした。しかし、医療観察法についてはほとんど知らずに、あたかもバスに乗り遅れるなとばかりに触法障害者支援に手を上げようとするその姿勢に、大きな危惧を抱いたことがあります。さぽーと3月号では、触法障害者の支援について、その基本的概念から法制度、処遇内容まで包括的に説明されています。しかし、この論文には以下の問題点があります。

1. 医療観察法の問題がネグレクトされている
①成立の経緯の問題
池田小学校事件を契機にマスコミの「精神障害者は無罪放免」キャンペーンのもとで成立した医療観察法でしたが、犯人は詐病であり精神障害ではありませんでした。立法事実(法制定に必要とされた事実)が曖昧なまま成立した法ですが、その裏では木村厚労副大臣(当時)へ日本精神病院協会政治連盟から多額の献金があったことも明らかになりました。
②運用実態の問題
本来は、疾病性、治療反応性という医療観察法の処遇要件にあてはまらない知的・発達障害者が申し立てられ入院処遇決定を受け、また入院が長期化していることが報告されています。
③国連障害者権利条約との関係
障害を理由にした差別を禁じた障害者権利条約。国連障害者権利委員会の日本政府への事前質問は、精神障害を理由とした強制医療の廃止を前提としており、医療観察法の撤廃のためにどのような措置を講じたのか日本政府に問うています。https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000546852.pdf

2. 刑事司法と福祉の連携についての問題
起訴猶予段階での福祉との連携に対しては、福祉が刑事司法の下請け化されるという強い批判があります。更生支援プログラムは本人の主体的な生き方につながればよいのですが、個人の行動を焦点化するあまり、犯罪や問題行動を個人的なものとして矮小化してしまうおそれはないでしょうか。
http://nkl3.livedoor.blog/archives/462631.html
http://nkl3.livedoor.blog/archives/462671.html

3. リスクとは?誰にとってのリスクか?「リスク管理」における主語は誰か?
論文には「支援者は、本人の強みに関心が向きがち」とあります。現代の支援は、かつてのような指導、訓練ではなく、ストレングスモデルにもとづくエンパワメントですのでそれは当然です。脆弱性のアセスメントは必要でしょう。しかし、そのリスクは誰にとってのリスクでしょうか?社会か本人かという二分法には答えがないと思います。しかし、リスクという言葉はその意味を十分に押さえて使用しなければ、行きつく先は電子足輪を当然視する社会になりかねません。

さぽーとの読者がこの論文を読んで医療観察法を無条件、無批判にとらえてしまうとすれば、大変恐ろしいことです。また、再犯防止を焦点化しない触法障害者支援については、さぽーと2017年8月号のSEMINAR「加害者となってしまう障害者の支援(後半)」にも紹介されています。医療観察法の評価や触法障害者支援のあり方については様々な考え方があり、その多様な考えや実践を学ぶことが大切です。この論文も、その中の一つの考え方であることを念頭において読むことで、より学びが深まります。(林)

〈象徴(人間)天皇教〉とは何かー「代替わり」と戦後憲法ー

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さぽーと2月 2020.2月号  日本知的障害者福祉協会 特集「権利擁護の理解のために―利用者支援の基本と課題―

さぽーと2月 2020.2月号  日本知的障害者福祉協会
特集「権利擁護の理解のために―利用者支援の基本と課題―

さぽーと今号はとても読み応えのある特集です。
佐藤彰一氏の論文「成年後見制度はだれのためのものか」には、成年後見制度が障害者権利条約に抵触するおそれがあることが示されています。論文は抵触すると断定してはいませんが、国連障害者権利委員会が日本政府に出した事前質問には、「障害者が法律の前にひとしく認められる権利を制限するいかなる法律も撤廃すること。また,民法の改正によるものを含め法的枠組み及び実践を本条約に沿ったものとすること。事実上の後見制度を廃止すること。また,代替意思決定を支援付き意思決定に変えること。」とあり、廃止のためにどんな措置をとったかが質問されています。

井上英夫氏の論文「知的障害のある人と人権」には、津久井やまゆり園事件は「日本社会の根底にある優生思想、劣等処遇、惰眠論等のマグマが噴出したもの」であるが、このままでは被告人個人の責任を追及する「報復論、厳罰論に帰着しかねない」と懸念し、事件についての議論には「正面から人権・法的問題として立ち向かう姿勢が不十分」と述べています。また、事件に対する国の責任を明確に述べ、社会保障の自助・共助・公助論と営利化政策を批判しています。

社会福祉法人同愛会は、「入所施設のあり方を問い直すことを抜きにT4作戦だとか優生思想だとか言っても無意味だ」と職員に公言し、津久井やまゆり園の利用者処遇のあり方を検証する必要性を強く主張しています。しかし、事件の背景にある国の政策や排外主義的な社会思潮に対する考察は見られず、国の社会福祉政策を変える運動にも参加していません。入所施設のあり方や津久井やまゆり園の利用者処遇の検証は必要ですが、それだけならあの悲惨な事件は、「植松被告は津久井やまゆり園が作り出した。運営母体のかながわ共同会が悪かった。」という結論で終わってしまう事にもなりかねません。井上論文には、事件を社会的文脈で検証することの必要性が示されています。

SEMINARには知的障害をもつ当事者の活動として、ピープルファースト京都のメンバーと支援者が登場しています。当事者団体のメンバーがさぽーとに登場したのは私の知る限り初めてです。ピープルファーストは、2月20日に津久井やまゆり園事件について記者会見と黒岩神奈川県知事への要請を行っています。
https://www.youtube.com/watch?v=O2AQA_tJ6fM&feature=emb_logo

建て替えと引越しで棟が増えた日の出福祉園では、各部署にさぽーとが配布されているでしょうか?
以前のように配布後すぐ廃棄されることのないようにしましょう。そして、ぜひ読みましょう!(林)
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