東京都労働委員会同愛会事件(都労委令和2年不第83号)
第1回調査報告

10月13日に第1回調査がありました。法人側は、2020年4月から東京事業部の契約職員をソウェルクラブに加入2020_autumnさせることを東京事業本部の会議で決定し、理事長の承認後にその内容を組合に文書で回答すると都労委に回答しました。第38回団交でその実施を確約しなかった法人が、今回の調査で実施を明言したことは歓迎すべきことです。しかし、今回の調査ではその具体案が組合へ示されていませんので、組合はその文書を受けてから今後の態度を検討します。

ソウェルクラブが非常勤コースを設けたにもかかわらず、法人は日の出福祉園以外の東京事業本部の事業所の契約職員に対して、一貫して冷淡な姿勢を続けてきました。法人は、とりあえず西多摩事業部の事業所で希望者に加入手続きを開始するという第36回団交労使合意も履行せず、今般の都労委での係争に至りました。国の働き方改革関連法の施行と組合の不当労働行為救済申立が、法人の尻に火をつけた形となりました。しかし、法人が労使合意を遵守していれば、そして、法施行に合わせてこの4月に法人が就業規則を改正していれば、そもそも争議にはなりませんでした。
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調査前に組合に届いていた法人の答弁書(組合の申立に対する反論)は、争点である契約職員のソウェルクラブ加入だけでなく、組合として看過できない問題を含んでいます。

法人は「文書の掲示」および「職員への周知」については同意しないと回答しているのですが、組合の救済申立の内容である謝罪文書の掲示・職員周知(ポストノーチス)は、調査と審問の結果に応じて都労委が法人に命じるものです。被申立人である法人が命令に応じないと初めから明言することは、裁判で被告人が判決に応じないと裁判官に宣言するに等しいものです。これは、労働委員会制度の趣旨を法人が理解していないことを示しています。また、不当労働行為を構成する具体的事実を概ね認めながらも、謝罪文書掲示や職員周知に同意しないという法人の答弁は、法人の謝罪がその場しのぎの組合対策に過ぎないことを示しています。法人の労使合意不履行によって、いまだ福利厚生すら保証されず不利益処遇を被っている非正規職員に対する誠実な気持ちが全く見られないのです。組合への謝罪で済ませようとする法人に対して、組合は職員が目に入っていないと第38回団交で強く批判しましたが、答弁書にも法人のそういった姿勢が表れています。

つまるところ、法人の主張は「自分たちは謝罪した。努力表明もした。だから労使合意を無効にしていない」というものでした。実施期限も示さず実施するかどうかも確約しない努力表明は単なる法人の一方的態度表明であって、労使間の約束事として何ひとつ実体化されていなかったのです。実施の担保のない努力表明は労使合意の代わりになりません。どうも法人には、労使対等の原則にもとづいて労働組合と誠実に話し合い、合意・約束事項を具体的に取り決め、労使双方がそれを遵守していくという労使関係の基本的な姿勢が根本的に欠如しているのではないでしょうか。法人は自らを労働組合よりも上位に位置付けており、労使合意を反故にしているという自覚にすら欠けているようです。今後、労働者に利益となる労働関係法規の改正がなされたとしても、法人は今回同様に施行日を過ぎても就業規則を変えないのでしょうか?今回の調査では答弁書よりも一歩進んだ法人の回答が得られました。しかし、組合が救済申立をしなければ労使間の合意を履行しない態度は、即刻改めるべきです。(林)
ソウェルビラ