緊急事態宣言の発出以降、登園自粛による保育体制の縮小や通所事業所の休業などに伴って、一律的に年次有給休暇を消化させられているなどの労働相談が相次いでいます。福祉保育労として考え方をまとめましたので、以下に示します。ぜひ、ご相談ください。また、組合の力で改善させていきましょう。
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2020年5月7日
福祉職場で働くみなさんへ

登園自粛による保育体制の縮小や通所事業所の休業などに伴って、
一律的に年次有給休暇を消化させることは違法であり無効です

全国福祉保育労働組合

 新型コロナウイルス感染症対策として、自治体からの要請等による登園児の減少に伴う保育体制の縮小や、通所サービス事業所等の休業といった判断を使用者がおこなうケースが増えています。こうしたケースでの労働者への休暇保障に関して、単なる休暇の取らせ方の問題ではなく、福祉労働者の健康と生活を守るという観点で、以下に当労組としての考え方を示します。なお、社会福祉施設・事業に早急に必要と考える施策全般(危険手当の支給など)については、別途、見解を示す予定です。

 まず前提として、使用者が一律に年次有給休暇を時季指定するなど労働者の意思に反して取得させることは、労働基準法で守られている労働者の権利を侵害する違法な対応であり、無効です。厚生労働省のウェブサイトの「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」では、「年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものなので、使用者が一方的に取得させることはできません」とされています。これは、「年5日の年次有給休暇の確実な取得をさせる使用者の義務」が求められる場合でも同様です(詳細については、厚生労働省2019年3月発行の「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」パンフレット参照)。

 今回の新型コロナウイルス感染症対策では、福祉労働者と利用者・家族のいのちと健康、暮らしを守ることが使用者に求められています。特に、学校の休校や事業所の休業、外出の自粛などの要請がされるなかにおいても、福祉職場では必要とする人を受け入れることを求められています。使用者には、労働契約法で労働者が生命、身体等の安全を確保して働けるようにする「安全配慮義務」が課されています。感染の危険性があっても奮闘している福祉労働者の健康と安全を守る観点から、必要な休暇を保障することは使用者の責任です。

 また、今回のケースでは、国や自治体の要請はあっても、休業等の判断は使用者の責任においてなされています。さらに、国からは、幅広い分野の事業所に対して賃金を全額補償した特別休暇の創設が要請されていますから、福祉労働者を休ませた場合にも賃金の全額を支給することが必要です。

 使用者には、年次有給休暇を消化させる対応を撤回させ、常勤・非常勤といった雇用形態を問わずに賃金を全額補償する特別休暇制度を導入することを求めましょう。また、その財源は国の責任で確保させるべきです。すでに年次有給休暇が充てられていたとしても、最初に年休を充てられた日や緊急事態宣言が出された日等にさかのぼって対応させることが必要です。特別休暇の導入に至らない場合でも、少なくとも在宅勤務として取り扱わせ、賃金補償をさせましょう。

 福祉保育労では、年次有給休暇での対応をやめさせて、特別休暇での対応を要求して勝ち取った職場がいくつもあります。困っているみなさん、ぜひ相談してください。

以 上 
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福祉職場で働くみなさんへ
登園自粛による保育体制の縮小や通所事業所の休業などに伴って、
一律的に年次有給休暇を消化させることは違法であり無効です
(2020/5/7全国福祉保育労働組合)PDFファイル