さぽーと2月 2020.2月号  日本知的障害者福祉協会
特集「権利擁護の理解のために―利用者支援の基本と課題―

さぽーと今号はとても読み応えのある特集です。
佐藤彰一氏の論文「成年後見制度はだれのためのものか」には、成年後見制度が障害者権利条約に抵触するおそれがあることが示されています。論文は抵触すると断定してはいませんが、国連障害者権利委員会が日本政府に出した事前質問には、「障害者が法律の前にひとしく認められる権利を制限するいかなる法律も撤廃すること。また,民法の改正によるものを含め法的枠組み及び実践を本条約に沿ったものとすること。事実上の後見制度を廃止すること。また,代替意思決定を支援付き意思決定に変えること。」とあり、廃止のためにどんな措置をとったかが質問されています。

井上英夫氏の論文「知的障害のある人と人権」には、津久井やまゆり園事件は「日本社会の根底にある優生思想、劣等処遇、惰眠論等のマグマが噴出したもの」であるが、このままでは被告人個人の責任を追及する「報復論、厳罰論に帰着しかねない」と懸念し、事件についての議論には「正面から人権・法的問題として立ち向かう姿勢が不十分」と述べています。また、事件に対する国の責任を明確に述べ、社会保障の自助・共助・公助論と営利化政策を批判しています。

社会福祉法人同愛会は、「入所施設のあり方を問い直すことを抜きにT4作戦だとか優生思想だとか言っても無意味だ」と職員に公言し、津久井やまゆり園の利用者処遇のあり方を検証する必要性を強く主張しています。しかし、事件の背景にある国の政策や排外主義的な社会思潮に対する考察は見られず、国の社会福祉政策を変える運動にも参加していません。入所施設のあり方や津久井やまゆり園の利用者処遇の検証は必要ですが、それだけならあの悲惨な事件は、「植松被告は津久井やまゆり園が作り出した。運営母体のかながわ共同会が悪かった。」という結論で終わってしまう事にもなりかねません。井上論文には、事件を社会的文脈で検証することの必要性が示されています。

SEMINARには知的障害をもつ当事者の活動として、ピープルファースト京都のメンバーと支援者が登場しています。当事者団体のメンバーがさぽーとに登場したのは私の知る限り初めてです。ピープルファーストは、2月20日に津久井やまゆり園事件について記者会見と黒岩神奈川県知事への要請を行っています。
https://www.youtube.com/watch?v=O2AQA_tJ6fM&feature=emb_logo

建て替えと引越しで棟が増えた日の出福祉園では、各部署にさぽーとが配布されているでしょうか?
以前のように配布後すぐ廃棄されることのないようにしましょう。そして、ぜひ読みましょう!(林)