被害者に真の人権回復を 優生保護法訴訟 
仙台地裁不当判決を受けての緊急声明

○JDは2019年6月4日、被害者に真の人権回復を 優生保護法訴訟 仙台地裁不当判決を受けての緊急声明を公表しました。 

2019年6月4日
被害者に真の人権回復を
優生保護法訴訟 仙台地裁不当判決を受けての緊急声明

NPO法人
日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳

 5月28日、旧優生保護法をめぐる国家賠償請求訴訟で、仙台地裁は憲法違反を認めながら、20年とされる排斥期間により賠償請求を棄却する旨の判決を行なった。

 私たちは、4月24日に制定された「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下、一時金支給法)が多くの問題点を残したまま、不十分な内容で成立し、その不十分さが司法の場で補われることを切望したが、期待は大きく裏切られた。

 判決は、「一時金支給法」では触れられなかった旧優生保護法に基づく強制不妊手術は「憲法に違反し、無効」とした。加えて、賠償請求権を認め、手術から20年の間に原告らが国に賠償請求することは「現実的に困難だった」として「立法措置は必要不可欠」ともしている。また、判決は最後に、「根強く残っていた優生思想が正しく克服され、何人も差別なく幸福を追求することができ、一人ひとりの生きがいが真に尊重される社会」の実現を求めている。

 こうした違憲判断の明言などの文脈からみて、判決は、当然のごとく原告の主張が全面的に受け入れられるものと想定させた。ところが、一転して結論は異なっていた。すなわち、子を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)の議論の蓄積が少ないことを理由に国会の立法不作為を認めず、除斥期間(不法行為の時から20年)に合理性があるとして、請求を棄却したのである。違憲を認めながら、なぜこのような結論に至るのか、素朴な市民感覚からは理解に苦しむ。

 憲法違反の法律によって、おびただしい数の障害のある人が身体を傷つけられ、リプロダクティブ権を奪われた。元に戻ることはできない。原告の訴え、そしてこうした被害者の苦悩を合わせ見るとき、今般の仙台地裁の判決はこれらにまともに向き合うものではなかった。ここに、あらためて不当判決であることを断言したい。

 私たちは、仙台地裁の判決を受けての原告・弁護団による控訴を全面的に支持し、支援したい。JDは、先に示した提案書(2018年11月21日)において、「被害者に共通するのは、①物事を主張できないか主張できにくい立場にある、②もともと社会の偏見や差別にさらされ、ニーズや実態が封殺されやすい状態に置かれている、③被害者に女性が多いことは、女性障害者が被りやすい、いわゆる複合差別が重なっている、などである。」とし、そのうえで「この問題への対処に当たっては、既存の法制度の枠組みや慣行のみでは限界がある。これらを越えた観点が必要である。」とした。控訴審においては、この点を十分に踏まえてほしい。

 最後に、全国の7地裁で闘っている原告や関係者に対しても引き続き支援し、人権と尊厳の回復に資する判決を求めていく所存である。