2019年5月29日

優生保護法国家賠償訴訟・仙台地方裁判所判決に対する声明
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

 DPI日本会議は、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を実現するための取り組みを進める、全国96の加盟団体からなる障害当事者団体である。私たちは障害当事者の立場から、「優生手術は障害者の生殖の権利に対する人権侵害であり、国は被害者への謝罪と賠償等を早急に実施すべきである」と20年以上前から訴えてきた。

全国初の提訴となった優生保護法国家賠償訴訟おいて、2019年5月28日の仙台地方裁判所(中島基至裁判長)の不当判決を受け、DPIとして緊急に声明を表明するものである。

障害者のリプロダクティブ権を認め、旧優生保護法は憲法13条に違反し、無効であるとの判断を下した。これは原告の心からの訴えが突き動かしたものであり、優生保護法を制定し推進してきた国の責任が厳しく問われなければならない。

しかし、国会がリプロダクティブ権侵害に基づく損害を賠償する立法措置を執らなかった立法不作為と厚生労働大臣が損害を賠償する立法等の措置を執らなかったことは違法ではない、との判断は到底納得できるものではない。裁判所はその理由として、「我が国においてはリプロダクティブ権をめぐる法的議論の蓄積が少なく、憲法違反の問題が生ずるとの司法判断が今までされてこなかった事情の下においては、権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であることが明白であったとはいえない」としている。優生保護法は憲法違反だが、法的議論の蓄積が少なかったため、損害賠償の法律を作らなかったことは違法ではないということである。法的議論の蓄積がなければ被害者は救済されないのか。憲法に違反する法律をつくり、その法律によって多くの障害者が被害を受けたにもかかわらず、救済しなくても違法ではないという判決は、障害者の人権を踏みにじるもので、不当判決と言わざるを得ない。

また、「優生保護法が広く推し進めた優生思想は社会に根強く残っていた」「本人が優生手術に関する情報を裏づける客観的証拠を入手すること自体も相当困難であった」と述べられているような状況の中で、被害者は一体どうやって提訴できたというのか。それにも関わらず、「除斥期間」を理由に損害賠償請求を却下することは矛盾も甚だしい。

私たちDPIは全国の仲間に、今回の不当判決を受けた2人の控訴審において引き続き支援を呼びかけたい。同時に、全国で争われている裁判へも傍聴を始めとする支援を行い、2016年に起きた津久井やまゆり園・障害者殺傷事件に至る、社会に広く存在する優生思想の克服に向けて、今後も粘り強く取り組む決意である。