1415aea7樹木伐採と戦争準備態勢

あきる野に暮らして14年。この間どれだけ多くの木が伐採されただろう?夏の太陽を遮り冬に陽ざしを届けるはずの街路樹が、初夏に丸裸にされるのを見て驚き呆れた。桜だって容赦ない。枝を大きく伐られた桜があちこちでみすぼらしく花をつけている。大木であろうが小木であろうがかまわない。とにかく、東京の人は木を切るのが好きだ。不思議なのは伐採の連鎖。周囲がスッキリすると自分の庭や土地も伐らねばという強迫的心理が働くのか?まるで示し合わせたように、どんどん伐られていく。オナガ、ツツドリ、カオグロガビチョウが姿を消した。次はキジがいなくなるかもしれない。

里山ブームの一昔前、武蔵野の森とその保全が理想化された。自然環境への人為は肯定され、里山保全を提唱する森林ジャーナリストはゴルフ場ですら肯定的に評価した。「ウサギ追いし彼の山」。動物は身を隠せる場所にじっと身を潜める。ウサギ追う里山は下草のないスカスカの林だった。アカマツ林が景勝地だったのは、裸になって痩せた土地にもアカマツが育ったからである。戦争中は木炭バスも走らせた。山を丸裸にして食料増産のために段々畑を作った。写真を見れば、昔の日本は禿山だらけだった。

歴史上かつてないほど緑に覆われていると言われる現代の日本列島。戦後に大造林されたスギやヒノキや、かつての薪炭林が放置され大きく育ったからである。しかし、獣害の多発で里山管理の必要性は増している。また、防犯上見通しの悪い景観は好まれない。樹木に囲まれるのではなく、周囲から一望できる死角がない環境が市民の安全・安心を担保する。

しかし、木々に囲まれる感覚や、隠れ家のように自分の居場所を確保できる空間は、人間にはとても大切なものではないか?
一つは個人心理にとって。自己と他者の境界が曖昧になっている時や他者のまなざしや話し声が辛い時など、自分の身を隠せない環境はとても過酷である。誰からも見られない安心できる空間の確保のためには、大きな樹木は役立つはずである。
もう一つは社会心理にとって。見通しのよい住環境は権力に支配されやすい環境ではないか。周囲に木がない環境に暮らすことは、「自分は悪いことはしていない」と防犯カメラという名の多数の監視カメラを受容するのと同様、権力の恒常的な監視を積極的に受け入れる姿勢につながらないか。私たちが生活者としての私的領域を確保するために、住環境に大きな樹木は絶対に必要ではないか。

胡散臭かった里山ブーム。そして第1次安倍政権が打ち出したSATOYAMAプロジェクト。特定秘密保護法、共謀罪、マイナンバー、顔認証システムやTカード個人情報の警察への提供。里山保全よろしく、整然と管理され遠くから見渡せる物理的住環境は、個人情報の国家管理を是認する心性の醸成に一役買っていないだろうか。辺野古新基地建設強行、際限のない防衛費拡大、そして憲法改正・・・。美しい国と言いながら、山河を再び丸裸にしようとする者たちがいる。見通しの良くなった景色への違和感を大切にしたい。(林)