5e8d3275手をつなぐ 2018年6月号
全国手をつなぐ育成会連合会

旧優生保護法下での強制不妊手術について、育成会のこれまでの姿勢と現在の見解が「手をつなぐ」6月号に掲載されています。強制不妊手術は現代の人権感覚からすれば許されないことです。しかし、それは決して家族の悪意にもとづいたものだと一面化できないことがわかります。また、家族の判断には政治経済的な社会背景があったことが記されています。しかし、それは手術を受けた当事者を抜きにした、手術する側の論理であることは言うまでもありません。

「現代の人権基準で歴史を裁くことはおかしい」とは、従軍慰安婦問題でよく聞く言葉です。しかし、現代の基準で見直さなければ、すべての人類の歴史の負の部分は免罪されてしまいます。過去は現代の基準で評価することで未来の方向性が示されます。ハンセン病患者の隔離収容政策については、ハンセン病当事者の粘り強い運動によって国は患者に謝罪しました。隔離収容政策が続く精神科医療分野でも国家賠償を求める動きがあります。現代の人権基準とは、される側の論理が貫かれているかどうかです。

ひるがえって、私たちの仕事はどうでしょうか?私たちがいくら入所施設を「必要悪」、「最後のセーフティネット」と考えていても、収容施設としての施設の機能は変わりません。将来、「昔、知的障害者は施設に集められて暮らしていたんだよね。」という時代が到来し、入所施設が非人間的処遇の筆頭として世に語り継がれるかもしれません。残念ながら、今の私にはその具体的道筋が想像つきません。

「手をつなぐ」6月号を読んで、改めて私たちの仕事が歴史の流れの中にあること思い知らされました。入所施設で働く私たちは、今の仕事が未来永劫続く絶対的なものではないことを自覚しながら働く必要があります。働きがい、やりがいなどは職員の側の論理に過ぎないことを肝に銘じながら。(林)