日本知的障害者福祉協会の団体交渉に参加して 
その2

三つ目に、新しい就業規則が事前に職員に説明されたものと異なり、新たな条文が増えているということに驚きました。就業規則は後だしジャンケンのように使用者のフリーハンドでいくらでも追加できるものではありません。これも説明責任に関わることであって、労働組合に対する不誠実な姿勢というよりも職員全体に対して不誠実な姿勢だと思いました。日の出福祉園では、就業規則変更の際には労務担当者が新旧対照表を労働者代表に示した上で意見聴取を求めます。労働者代表は代表個人の意見だけではなく、職員全体から意見を募集して意見書として事業所側に提出します。事業所側は新就業規則と意見書を労基署に提出し、労基署が押印した意見書のコピーを労働者代表に返します。こういった手続きは面倒なようですが、使用者が職員への説明責任を果たすため、また労働者代表が代表としての職責を果たすために大切なことです。

四つ目に、最大の問題として感じたことは、団体交渉に組合がパワハラの加害者だと主張する事務局責任者である事務局長、当該管理職を協会側が出席させないことです。組合のパワハラの訴えに対して、協会側は団交議題ではない、団交は事実確認の場ではないと言います。ならば職員からパワハラの訴えがあった場合に事実確認をする手順は定められているのでしょうか。同愛会東京事業本部では、昨年度にハラスメント規定が内規として整備されました。日の出福祉園での窓口担当も男女1名ずつ置かれています。調査主体はハラスメント委員会という独立した機関ではなく東京事業本部の担当者。ハラスメントだと認定された場合の加害職員の懲戒処分は東京事業本部の判断ですので、どこが判断してどう決定するのかを明確に定めたほうがいいという日の出福祉園産業医の指摘もありました。申し立て事案がまだないため、この規定にどの程度実効性があるのかは未知数ですが、ともあれ形の上では同愛会東京事業本部では職員のハラスメントの訴えに対する対応の一定の手順が定められています。福祉協会の場合はどうでしょうか。ハラスメント規定がなく労働組合が団交議題として申し入れているのに、それが団交議題ではないというならば労働者はどこでそれを問題にするのでしょうか?
そもそも組合の団交要求に対して、使用者側は「この議題は可、この議題は不可」と裁定する立場にはありません。かつての同愛会も、組合の要求書に対して頼みもしないのに逐条回答して「このままでは実りある団交にならない」と要求書をつき返したり、「議題として馴染まないもの」と拒否してきたことがあります。それらは結果的に交渉議題となりましたが、当時の団体交渉は私たち組合側の罵声飛び交う激しいものとなりました。使用者側が労組に誠実に対応しなければ団体交渉は問題解決どころか問題をより複雑化させ、職場改善には何らつながらないことを法人と組合双方が経験しました。
ともあれ、福祉協会は退職者も含めて調査を行うと回答しています。かつて移動支援、重度訪問介護不正請求事件の時には、同愛会高山理事長も退職者にも聞き取りを行いました。福祉協会も団交議題にはしないという以上、調査の内容を可能な限り開示して、組合のハラスメントの訴えに誠実に対応してほしいと思います。

最後に組合側団交団から発言を求められ、私は福祉協会に、どうか誠実に労使関係を築いてほしいとお願いしました。
日本知的障害者福祉協会の労働問題に、私たち一人ひとりが関心を持ちましょう。そして、私たちの足下の職場の労働問題に取り組みましょう。(林)