【神奈川県警による不当逮捕を弾劾する緊急声明】

 川崎反ヘイト学生救援会は、ヘイトスピーチに抗議するため行動した学生に対する不当な逮捕に抗議し、新たに声明を公表します。

昨年私たちが発表した声明文にも記載したように、本件の発端となったのは2016年6月5日に川崎で行われた、差別扇動を目的とするデモ行進に対する抗議行動です。近年、外国人の排斥を叫びその生活を脅かす、いわゆるヘイトスピーチは大きな社会問題となり、多数の人々による批判・抗議にさらされてきました。それは在日外国人が多く集住する川崎でも例外ではなく、当日も数百人の市民が抗議に駆け付け、デモは行政指導の下で未然に中止されるに至ったことは周知のとおりです。
 
 しかしデモから6ケ月後、神奈川県警によって抗議行動に参加していた学生の居宅へ、「器物損壊」なる容疑を根拠とした家宅捜索が執行され、さらに捜索から2カ月以上が経過した2017年2月21日、当該学生が逮捕されるに至りました。つまり、今回の逮捕は昨年6月5日の川崎デモから約9ヶ月もの期間が経過してから強行されたものです。
 
当該学生はデモの当日、マイノリティを標的とする卑劣なヘイトスピーチを許すことはできないという純然たる動機から、きわめて穏当な形で抗議行動に参加していたにすぎず、他人の物を損壊した事実は一切存在しません。加えて、本件の捜査はデモ行進の参加者側が提出した被害届に基づくものですが、かかる被害届の提出は、ヘイトスピーチを内容とするデモを全国各地で主催してきた在特会(在日特権を許さない市民の会)の事実上の後継団体と目される日本第一党最高顧問、瀬戸弘幸の積極的な指導の下で組織だって行われ、本件以外にも多数の被害届が乱発されたことも明らかとなっています。
 
 以上の事実に鑑みれば、デモ参加者側が主張する「被害」は、政治的な動機に基づく虚偽に等しいものであるとの批判は免れないでしょう。差別主義者の言いがかりに等しい主張を鵜呑みにする形で家宅捜索を執行し、挙句の果てに供述調書を書き上げるために無実の人間を拘束するという神奈川県警の行動は許されるものではありません。付言すれば、そもそも当該学生が川崎デモ後の9か月間、平常通りの学生生活を送っており、かつ今回の逮捕が本人の通学路上で行われたことを考慮すれば、本人が罪証を隠滅したり、逃亡を企てたりする理由もなく、身体拘束を及ぼす必要性にも全く欠けています。したがって本件の逮捕はまさしく冤罪による人権侵害と断ずる以外にはなく、絶対に許されるものではないと考えます。

 また、おりしも川崎でのデモは通称「ヘイトスピーチ解消法」が施行された直後のことでした。同法は、先に述べたような在日外国人を執拗に標的とする差別、排外主義を許さないという社会の声の高まりの象徴です。川崎をはじめとした地方自治体においても、世論を受けてヘイトスピーチを抑止し、外国人との共生を目指す取り組みが続けられてきています。こうした人々の真摯な努力を見るにつけ、私たちは警察のヘイトスピーチ問題に対する姿勢を指弾せざるを得ません。川崎デモ以前のヘイトスピーチに対する街頭抗議行動でも、抗議参加者への過剰警備などの問題から、警察はその立場を問われてきました。とりわけ本件のデモ参加者の虚偽の言い分に基づく神奈川県警の行動は、客観的に見れば差別主義者の政治活動を黙示に支持し、これをほう助するものに他なりません。

上記の理由から私たちは神奈川県警による不当逮捕に断固抗議し、当該学生の釈放を求めて行動します。ヘイトスピーチに反対する方々におかれましては、救援会にご注目、ご支援いただけるようお願いします。
                   
2017年2月22日 川崎反ヘイト学生救援会