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「増大する悪しきA型問題」
―連載 障害者支援の現場から
すべての人の社会 Society for All  10月号  特定非営利法人日本障害者協議会

当事者、支援者、研究者など、多くの障害者関係団体で構成される日本障害者協議会(JD)の機関誌「すべての人の社会」には、障害種別を超えて私たち福祉労働者が知っておくべきさまざまな問題が取り上げられています。なかでも、悪しきA型問題についてのNPO共同連の斉藤懸三氏の記事が驚きでした。

それによると、悪しきA型とは、「給付金や助成金を得ることを目的に設立され、その金の一部で障害者の最低賃金を支払い、経費を切り詰めて金儲けを企む、障害者福祉サービス事業に巣くう悪質な貧困ビジネス」のことです。
全国に就A事業所は22,33カ所。その数は爆発的に増えているそうです。悪しきA型は株式会社がつくった事業所が圧倒的に多く、加盟料100万円のフランチャイズ方式であったり、それを指南するコンサルタント業者が存在するとのこと。コンサルタント業者はサビ管も見つけてきてくれるとか。

斉藤氏は事態の背景に、自立支援法以降、障害者福祉サービス事業に営利法人が参入できるようになったことを挙げています。また、労働の質が悪くても障害者が集まる理由に、福祉的就労であるB型の工賃の低さを挙げています。A型は最低賃金法が適用されるからです。

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ちょうど、さぽーとの10月号も「工賃向上の支援は働きがいの支援から」という特集です。ディーセントワークが取り上げられていますが、それは障害当事者の働きがいを目標にした支援論の範疇です。しかも就Bでのそれしか論じられておらず、労働関連法規が適用される雇用型の就Aには言及されていません。

ディーセントワークとは労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権)が保証されていることです。どんなに働きがいがあっても労働基本権が剥奪されていたら、それはディーセントワークの定義に当てはまりません。支援者自身が労働基本権を知らずそれらを一度も行使したこともなければ、どうして利用者のディーセントワークが保証できるでしょうか?

利用者を「顧客」と呼んで憚らない同愛会東京事業本部。私たちの働く同愛会にも就A事業所はあります。私たち自身が労働基本権を学び行使していくことで働きやすい職場を作っていくことは、すなわち利用者支援の問題でもあること。それはさぽーとを読むだけではなかなか結びつかないのですが、すべての人の社会を読むとそういった視点が大切であることが学べます。(林