東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者の基本的人権を回復し、脱原発の実現を目指す宣言


2011年3月11日の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故発生から、既に3年が経過した。東日本大震災による死者・行方不明者は1万8500人、震災関連死として認定された死者は2900人をそれぞれ超え、全半壊した建物は40万棟以上に達し、避難生活者は現在もなお約26万人も存在する。震災発生から3年以上が経過しても、今なお多くの被災者・原発事故被害者が、経済的にも精神的にも過酷な状況に置かれ、十分な救済を受けられずにいることは、極めて深刻な事態であり、重大な人権侵害である。

当連合会は、基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする法律専門家団体として、被災地弁護士会をはじめ全国の弁護士会・弁護士会連合会、日本司法支援センター、地方自治体、ボランティア団体等と連携して、避難所・仮設住宅での法律相談を含む面談相談、電話相談あるいは情報提供を行い、各種ADR(裁判外紛争解決手続)への協力や原発事故被害者の損害賠償請求等の支援活動に取り組んできた。加えて、被災者・原発事故被害者の支援のためのあらゆる立法提言活動等にも精力的に取り組み、原発事故被害者の救済に関し損害賠償請求権に関する消滅時効特例法の制定に尽力しこれを実現したほか、災害弔慰金の支給等に関する法律の改正、相続放棄等の熟慮期間の延長に関する特例法の制定、日本司法支援センター震災特例法の制定、原発事故子ども・被災者支援法の制定、東日本大震災復興特別区域法の改正など、一定の成果を上げている。

しかし、いまだ被災地の復旧・復興は遅々として進んでおらず、被災者・原発事故被害者が東日本大震災発生前の生活を取り戻すには程遠い実情にある。当連合会は、復旧・復興の主体が被災者・原発事故被害者であり、復旧・復興が憲法の保障する基本的人権を回復するための「人間の復興」であることを改めて銘記し、今後も、歩みを止めることなく被災地の復旧・復興に取り組むことを改めて宣言するとともに、特に以下の問題について取り組む決意である。

1 災害弔慰金等の支給における震災関連死の認定に関し、死亡時の地域によって震災関連死として認定されないことのないよう、今後も認定状況について注視し、審査方法や事例の公表・認定基準の策定に関する提案をするとともに、今後、大災害が発生した場合にも、一人でも震災関連死による死者が少なくなるよう、避難所や仮設住宅等の環境改善等の問題にも取り組む。

2 復興事業用地の取得が円滑かつ適正に行われるために、東日本大震災復興特別区域法の改正後も、衆議院東日本大震災復興特別委員会でなされた決議の内容に沿った運用がなされるよう、その運用・進捗状況を注視した上で、必要に応じて、運用改善や抜本的対策も含めた更なる政策提言を積極的に行う。

3 復興まちづくりについては、被災住民に最も身近な基礎自治体である市町村に裁量のある権限と予算を配分するよう、各種法制度の改正や住民意思の適正な反映を確保するための、十分な情報提供と専門家の助言を前提にした仕組みづくりに取り組む。

4 個人版私的整理ガイドライン(被災ローン減免制度)の利用件数の低迷を踏まえ、東日本大震災の被災者を一人でも多く救済するべく、今後もその運用改善に取り組むとともに、将来の大災害の発生に備えて、全債権者の同意を必要とする現在の同ガイドラインの見直しを行い、その立法化に取り組む。

5 福島第一原子力発電所事故による被害について、国及び東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が完全かつ速やかな賠償義務を誠実かつ確実に履行するよう、引き続き全力で取り組み、東京電力に対し、改めて原子力損害賠償紛争解決センター(以下「原紛センター」という。)の和解案を尊重及び遵守することを求め、政府に対しては、東京電力に対し、強くその旨を指導すること及び原紛センターの和解案に片面的裁定機能を付する立法を行うことを、改めて求めていく。

さらに、改めて政府に対し、原発事故子ども・被災者支援法の理念に基づいた具体的な支援策を早急に定めるよう求めていく。
 
6 深刻な原子力発電所事故被害の再発を未然に防止するため、以下のとおり、原子力推進政策を抜本的に見直し、原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求めていく。
 
(1) 原発の新増設(計画中・建設中のものを全て含む。)を止め、再処理工場、高速増殖炉等の核燃料サイクル施設は直ちに廃止すること。

(2) 既設の原発について、原子力規制委員会が新たに策定した規制基準では安全は確保されないので、運転(停止中の原発の再稼働を含む。)は認めず、できる限り速やかに、全て廃止すること。

(3) 原発輸出は相手国及び周辺諸国の国民に人権侵害と環境汚染をもたらすおそれがあるため、原発輸出政策は中止すること。

(4) 今後のエネルギー政策は、再生可能エネルギーの推進、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化と低炭素化を政策の中核とすること。

以上のとおり宣言する。

2014年(平成26年)5月30日
日本弁護士連合会

(提案理由)
第1 震災関連死の合理的かつ公平な認定・・・・・・