労働政策審議会・労働力需給制度部会(部会長・鎌田耕一東洋大学教授)は本日、広範な労働組合や市民の反対を押しきって、「労働者派遣制度の改正について(報告書(案))」を取りまとめた。全労連は、報告書の内容と強引な取りまとめに強く抗議する。

 報告書は第一に、「派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とすることが適当」としながら、(1)派遣労働者が派遣元に無期雇用の場合には、期間制限をなくし、(2)派遣労働者が派遣元に有期雇用の場合も、派遣先企業が3年ごとに過半数組合等から「意見を聴取」しさえすれば、人を入れ替えていつまでも労働者派遣を使い続けることができる内容となっている。実際には期間制限はなきに等しくのであって、羊頭狗肉と批判されねばならない。
 第二に、労働者や市民の強い願いである「均等待遇」原則については、「均衡待遇の推進」に止め、「配慮する」など何ら具体的な担保のないものとなっている。
 また、登録型派遣・製造業務派遣についても、「経済活動や雇用に大きな影響が生じるおそれがある」として、禁止に背が向けられた。

 もし、報告書どおりの法「改正」が強行されれば、安価でいつでも切れる制度として、正規雇用の職場を奪い、労働者派遣への置き換えが急速にすすむことは明らかである。派遣労働者から正規雇用への道は一段と狭まり、雇用の不安定化に拍車がかかることが強く懸念される。
 安倍政権は春闘を前に賃上げをさかんに口にしているが、その言葉にも逆行に、働く人々の賃金水準をいっそう低下させて、内需縮小・景気後退の悪循環を招くものでもある。
 労働者派遣はそもそも、職安法第44条の例外として限定的に認められているに過ぎないのだから、労働者派遣を一般化・永続化する今回の報告書は、労働法制の根幹を揺るがず大改悪である。法制度上もとうてい認められない。

 今回の報告書は、「期間制限」の項で、「26業務を今日的な視点から絞り込んだ上で、引き続き業務単位による期間制限を維持すべき」という労働者代表委員からの意見が付記されたように、労働側の意見を封殺し、政府と公益委員が経済界の意向に沿って強引に取りまとめを急いだものとなっている。三者構成の原則からも、重大な瑕疵があると指摘する。

 全労連は、使い捨て労働を一般化する労働者派遣法大改悪の撤回を強く求め、広範な労働組合や市民との共同をさらに強め、大きな反撃をつくっていく決意である。
 「年越し派遣村」から5年が経過した。当時、派遣切りの嵐に対して「政治災害」だという批判が沸きあがったが、労働者派遣の不安定さは今も何ら変わっていない。真に専門的な業務に限定した期間制限を維持するとともに、間接雇用ゆえの労働者派遣の不安定さを是正する規制強化こそが本来、今求められていることである。

2014年1月29日
全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和