触法障害者への地域生活支援(2)
―その実践と課題―
5月号の続編で紹介されている具体的事例は大変考えさせられます。
地域定着支援センターの課題として再犯防止をどのように考えるかが問われるとし、「福祉の刑事司法化」への抵抗が大きいことが記されています。どうして抵抗が大きいのか、起訴猶予段階での福祉プログラムについてなど、もう少し具体的に記してほしかったとも思います。
多機関・多職種連携が障害当事者の監視にならないような支援を考えることは、この問題の大きなテーマだと思います。それには、支援関係における主体の明確化が必要だと思いました。生きる主体は障害当事者であって支援者ではないこと。支援主体は支援者側であっても、当事者は操作の客体ではないこと。対人援助の基本的な考え方が、罪を犯した障害者の支援にも再確認されるべきだと思いました。「再犯防止」の主語が支援者であることの自覚が、支援者側に大切だと思います。
また、この問題は福祉サイドから福祉の文脈だけから考えられるべきではなく、国家権力や刑事司法のありかたについての歴史的な経緯を学ぶ必要があります。戦前の治安維持法や思想犯保護観察法、そして戦後の保安処分への動きと反対運動など、国家権力による管理統制と人権思想との対立の歴史についてです。
この特集に心神喪失者医療観察法が取り上げられたように、知的障害福祉の範疇だけでは考えられないのが「触法障害者」問題です。罪を犯した障害者の支援は知的障害、身体障害、精神障害などの障害種別を超え、路上生活者支援や貧困問題と繋がっています。この仕事を知的障害者福祉事業所での業務内だけで想定することはできません。この問題に向き合えば、他領域の問題を知り学ばざるをえません。さぽーと編集部には、今後もこの問題を継続して掲載して、当事者、弁護士、保護司、社会復帰調整官、医師、看護師、福祉施設職員など様々な立場からの意見を取り上げてほしいと切に思います。(林)