2012年06月

日弁連 社会保障制度改革推進法案に反対する会長声明

 社会保障制度改革推進法案に反対する会長声明

社会保障制度改革推進法案に反対する会長声明民主党、自由民主党及び公明党が今国会で成立を図ることにつき合意した社会保障制度改革推進法案(以下「推進法案」という。)は、「安定した財源の確保」「受益と負担の均衡」「持続可能な社会保障制度」(1条)の名の下に、国の責任を、「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じた個人の自立の支援に矮小化するものであり(2条1号)、国による生存権保障及び社会保障制度の理念そのものを否定するに等しく、日本国憲法25条1項及び2項に抵触するおそれがある。

すなわち、推進法案(2条3号)は、「年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、国及び地方公共団体の負担は、社会保険料負担に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とする」として、年金・医療・介護の主たる財源を国民が負担する社会保険料に求め、国と地方の負担については補助的・限定的なものと位置付けており、大幅に公費負担の割合を低下させることが懸念される。

また、推進法案(2条4号)は、社会保障給付に要する公費負担の費用は、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとするとしているが、財源の確保は、憲法13条、14条、25条、29条などから導かれる応能負担原則の下、所得再分配や資産課税の強化等の担税力のあるところからなされなければならない。

さらに、推進法案(4条)は、新設する社会保障制度改革国民会議の審議を経て社会保障制度改革を具体化する立法措置を講じるものとしているが、社会保障制度改革をめぐる国民的議論は、全国民の代表である国会において、全ての政党・会派が参加し、審議の全過程を国民に公開すべきであり、内閣総理大臣が任命する僅か20名の委員による審議に委ねることは民主主義の観点から不適切である。

最後に、推進法案(附則2条)は、「生活保護制度の見直し」として、不正受給者への厳格な対処、給付水準の適正化など、必要な見直しを実施するとしている。しかし、生活保護受給者の増加は不正受給者の増加によるものではなく、無年金・低年金の高齢者の増加と非正規雇用への置き換えにより不安定就労や低賃金労働が増大したことが主たる要因である。むしろ、本来生活保護が必要な方の2割程度しか生活保護が行き届いていないことこそ問題である。給付水準の見直しについては、最も低い所得階層の消費支出との比較により、保護基準を引き下げることになりかねず、個人の尊厳の観点からも是認できない。

当連合会は、2011年の第54回人権擁護大会において、「希望社会の実現のため、社会保障のグランドデザイン策定を求める決議」を決議した。しかし、推進法案は、上記のとおり、社会保障制度の根本的改悪、削減を目指すものとなっており、当連合会の決議に真っ向から反する法案である。

よって、当連合会は、今国会で推進法案を成立させることに強く反対するものである。

2012年(平成24年)6月25日
日本弁護士連合会
会長  山岸 憲司

日弁連声明

「障害者総合支援法」成立に際して、改めて障がいのある当事者の権利を保障する総合的な福祉法の実現を求める会長声明

 本日、国会で、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(以下「本法律」という。)が成立した。
 本法律は、障害者自立支援法の名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」(以下「総合支援法」という。)と改めるなど、同法を一部改正するものである。
 国は、2010年1月7日、障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と基本合意文書を締結し、障害者の権利に関する条約の批准も視野に入れ、「障害者自立支援法を2013年8月までに廃止し、新たな総合的な福祉法制を実施する」と確約した。
 これを踏まえ、当連合会は2011年10月7日、第54回人権擁護大会において「障害者自立支援法を確実に廃止し、障がいのある当事者の意思を最大限尊重し、その権利を保障する総合的な福祉法の制定を求める決議」を採択し、さらに2012年2月15日には「障害者自立支援法の確実な廃止を求める会長声明」を公表した。
 しかし、総合支援法の内容は、障害者自立支援法の一部改正に留まり、障がいのある人の基本的人権を具体的に保障する規定が設けられていない。障がいの範囲についても、障害者の権利に関する条約が求めている「障がいが個人の属性のみではなく社会的障壁によって生じる」とする社会モデルの考え方が採用されず、そのために新たな制度の谷間を生む内容となっている。また、自己決定権に基づき個々のニーズに即して福祉サービスを利用できる制度にもなっていない。かかる総合支援法は、当連合会が従来提言してきた内容とは相容れないものである。
 また、本法律は、附則に、施行後3年を目途として、常時介護を要する者に対する支援等の障害福祉サービスの在り方や支給決定の在り方等について検討を加え、所要の措置を講ずる旨の見直し規定を設けているが、本見直しに際しては、当事者参画のもとで、附則に例示された項目に限定されることなく、障がい者制度改革推進会議が取りまとめた骨格提言の内容が実現されるべきであり、障がいのある人の基本的人権を真に保障する福祉法制の実現に向けた検討が行なわれるべきである。
 当連合会は、3年後見直しの際には、人権擁護大会決議に基づく内容が実現され、何人も障がいの有無により分け隔てられることなく地域で暮らせる権利が保障される福祉法制が実現されることを強く求める。
2012年(平成24年)6月20日 日本弁護士連合会 会長 山岸憲

「基本合意」を破り、「骨格提言」を棚上げにした 障害者総合支援法の可決・成立に強く抗議します

声明
「基本合意」を破り、「骨格提言」を棚上げにした
障害者総合支援法の可決・成立に強く抗議します

                          2012年6月20日
                    全国障害者問題研究会常任全国委員会

 6月20日、国会は、多くの障害者・関係者の声を踏みにじり、民主・自民・公明三党の多数の暴挙によって、障害者総合支援法を可決・成立させました。この法は、「基本合意」を破り、障害者団体が一致してまとめあげた「骨格提言」を棚上げにするもので、「新法」とは名ばかりです。

 天下の悪法・障害者自立支援法は、障害者・関係者のねがいと大きな世論によって否定され、違憲訴訟団は国と基本合意を締結し、司法「和解」しました。この基本合意と障害者権利条約を指針として、政府機関として制度改革推進会議がもたれ、総合福祉部会は全員一致で骨格提言をまとめました。全国で200をこえる自治体は骨格提言にもとづく総合福祉法を求める決議をあげています。

 しかし、厚労省が2月に示した法案は、自立支援法の「廃止」ではなく「一部改正」でした。多くの厳しい批判があったにもかかわらず、政府与党は3月に閣議決定・国会上程し、4月26日には衆議院本会議で一切の審議もなく採決しました。これに前後して、国会前には雨の日も風の日も全国各地から4500名を越える障害者・関係者が駆けつけ、基本合意を守り、骨格提言を尊重した徹底審議を求め声を上げていました。

 総合支援法では、「障害者の人間としての尊厳を深く傷つけた」応益負担はなくなりません。収入認定は家族の収入を除外して障害児者本人だけにすべきです。制限列挙の「障害の範囲」では、「谷間の障害」はなくなりません。これでは障害者権利条約の批准条件は満たせません。
そして、「金ないものから金とるな!」。私たちが求めているのは「特別」なものではなく、極端に低い日本の福祉予算を、せめてOECD諸国の平均並にすること。同年齢の市民と同等の権利を保障することなのです。

 国が締結した基本合意という約束を破ることは、法治国家としての民主主義のルールを破壊する歴史的な暴挙です。

 私たちは障害者団体やさまざまな行政訴訟団、多くの市民とより固く連帯し、基本合意を守り、骨格提言を尊重した障害者総合福祉法の実現を求めます。障害者権利条約の批准にたる国内法制度の抜本改正をひきつづき、強く求めつづける決意です。

「基本合意」反故!「骨格提言」無視! 十分な審議なしの障害者総合支援法案成立に断固抗議する!

「基本合意」反故!「骨格提言」無視!
十分な審議なしの障害者総合支援法案成立に断固抗議する!

2012年6月20日
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会

 本日(6月20日)、政府は参議院本会議において、「障害者総合支援法案」(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律案)を十分な審議もなく、民主・自民・公明の賛成多数で可決・成立させた。
 同法案は、たとえ法名変更しても、あの問題多い障害者自立支援法を延命させる「改正案」以外のなにものでもなく、長年その廃止と「障害者総合福祉法」制定を求め続けてきた障害者・家族、関係者の願い・期待を踏みにじるものであるといわざるをえない。
 そもそも自立支援法の廃止、総合福祉法の制定は、民主党の政権交代時の公約であり、それゆえの障害者自立支援法違憲訴訟団との「基本合意」による和解であり、内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会での議論と「骨格提言」のとりまとめであったはずである。
 今回の「基本合意」反故、「骨格提言」無視の法案成立は、国約(国の約束)を平然と破る政治への不信とともに、「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」と訴えてきた障害当事者への裏切りであり、絶対に許すことはできない。

 政府・厚生労働省は国会審議の中で、「名前を変え、基本理念もつくり直した」、「総合支援法案」は事実上の自立支援法廃止であり、新法であるとの説明に始終した。また、「骨格提言」を「段階的・計画的に実現する」、今回はその第一歩であると説明した。これらの説明がいかに説得力がなく、「基本合意」反故・「骨格提言」無視の事実を否定するものにはならないことはいうまでもない。
 なによりも、「骨格提言」で示した権利法としての位置づけが「支援法」のままの見直しにとどまり、基本理念には「可能な限り」が盛り込まれ、難病を範囲に加えるとはいえ、具体的には「政令で定める」とされ、あらたな谷間の問題を生むことが心配される。また障害程度区分や就労支援のあり方等を「検討事項」として3年後に先送りし、しかもその検討も障害者・関係者の声を反映させるといいながら、「いつから」「誰が」「どのように」検討するのか全く具体化されていない。さらに、利用者負担に至っては、法文上「応益負担」が残されているにもかかわらず、「つなぎ法」(2010年12月3日改正)によって応能負担に変更し、すでに解決済とされ、「提言」で求めた「障害に伴う支援は原則無償」「障害者本人の収入に応じ」の明記は無視した内容になっている。今回強行された総合支援法が、現状の諸問題を解決するどころか、さらに深刻な問題をつくり出すことが懸念される。

 なにゆえに、政府・厚生労働省は自立支援法の「改正」にこだわるのか。そこには、小泉政権以来の社会保障構造改革・社会福祉基礎構造改革があり、介護保険と今国会で審議中の「子ども子育て支援法案」との整合性があることはいうまでもない。保険原理・受益者負担の強化・徹底、市場原理の導入・利用契約制度への変更に伴う公的責任の縮小・廃止等の構造改革路線は、現民主党政権に引き継がれ、そしていま、「社会保障・税一体改革」に基づく消費税増税と「福祉目的税化」、自助(自己責任)、共助としての社会保険化と制度間「統合」を基本とした「社会保障改革」がさらに国民に負担と犠牲を押しつけようとしている。

それだけに、私たちは高齢者・子ども等他分野との連帯・共同も重視し、「社会保障・税一体改革」を許さないとりくみをすすめながら、あくまでも「基本合意」「骨格提言」に基づく自立支援法の廃止と権利を保障する総合福祉法制定を求めて、障害者関係団体との共同をさらに強める決意である。

今般の障害者総合支援法の成立に抗議する ~骨格提言と基本合意の誠実な履行を強く求める~

今般の障害者総合支援法の成立に抗議する
~骨格提言と基本合意の誠実な履行を強く求める~

2012年6月20日
きょうされん 理事長 西村 直

 6月20日、障害者総合支援法(以下、総合支援法)が参議院本会議で可決し成立した。この法律の成立過程と内容を踏まえた時、看過できない多くの問題点があることから、きょうされんは強く抗議し、以下の点について指摘するものである。
 まず、法案策定過程において、所管する厚生労働省(以下、厚労省)が「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言(以下、骨格提言)」と「障害者自立支援法違憲訴訟基本合意(以下、基本合意)」を蔑ろにした点である。骨格提言の軽視は障害者及び障害団体の総意を軽視することであり、誰のための法律かという基本認識において大きな誤りを犯している。既存の枠組みやルールにしがみつくばかりで、障害者権利条約に適合させる意思や、当事者が求める新たな仕組みを創造する勇気も力量も持ち合わせていないことを、厚労省が自ら露呈したものに他ならない。基本合意に至っては軽視を通り過ごし、無視したといってもよい。これは司法の下で原告団と交わした約束を反故にする重大な詐欺行為であり、こうした振舞いの影響は単に障害者と関係者に及ぶだけではなく、国民全体の行政や司法への信頼を失墜させることにつながることを深く認識するべきである。
 次に、国会での審議が余りに形式的であった点である。4月17日に審議入りしてから6月20日に成立するまで、審議時間は衆参合わせて約6時間という短さだった。これでは、国会での徹底審議を求める障害者及び関係者の声を十分に反映したとはお世辞にも言えず、国会が自立支援法に替わる新法制定を軽視したと受け止められても仕方がない。民主党と厚労省は自立支援法を実質的に廃止したと主張するが、それならば国会の場でそれにふさわしい審議時間を確保すべきだった。これほどの審議時間の短さは、総合支援法が自立支援法のマイナーチェンジに過ぎなかったことの現れである。3月13日の閣議決定後に民自公3党により密室で協議が行われ、その場で修正内容について合意に至ったと聞き及んでいるが、このような手法では障害当事者や関係者の理解を得ることは到底出来ない。国会という開かれた場で必要な時間を十分にかけ、質の高い議論を通じて法案の問題点を明らかにした上で、立法府としての修正意見をとりまとめるべきであった。
 さらに内容面では、理念規定に「可能な限り」という必要な施策を行わない場合の言い訳につながる文言を入れたことや、利用者負担について応益負担の枠組みを残し収入認定を本人のみとしなかったこと等、骨格提言とは相容れない部分が多く残された点である。加えて、付則第3条において法施行後3年を目途に検討を加え所要の措置を講ずるとされた諸点について、この検討を骨格提言の段階的実施という観点から行うとともに、そのための検討体制を「障害者等及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」との規定を踏まえ早急に明らかにすることを、とりわけ政府・民主党及び厚労省に強く求める。
 骨格提言と基本合意をわが国の障害保健福祉施策に反映させることと、現在検討されている障害者差別禁止法(仮称)の制定は、障害者権利条約を実質的に批准するための不可欠な要素である。
最後に、きょうされんは以上のことを踏まえ、今後も全国の障害者及び関係者と連携し、障害のある人たちの安心・安全な地域生活を実現するために、運動を推進していくことをここに表明する。

連絡先:きょうされん        
東京都中野区中央5-41-18-5F     
Tel:03-5385-2223、Fax:03-5385-2299
E-mail:zenkoku@kyosaren.or.jp 
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