さぽーと2020.7表紙特集「知的障害のある方の尊厳を守る」
さぽーと2021.7月号
日本知的障害者福祉協会

今号も読み応えのある特集です。1.障害者権利条約は支援現場をどう変えてきたのか―成果と課題―、2.成年後見制度の実態と限界、3.支援現場から知的障害のある人の尊厳を考える―「行動」を「声」に変換する支援-、4.奪われてきた言葉を取り戻す過程としての当事者運動と大変興味深い4本の論文が掲載されています。
1には、権利条約が定める政治や公的活動への参加について問題提起され、2には現行の成年後見制度が障害者権利条約違反だと明確に記されています。当事者の意思や気持ちをどのように尊重されるのかを3は支援者サイドから、4は当事者運動サイドから述べています。4の執筆者渡邉琢氏やピープルファースト京都のメンバーさんたちは2020年2月号にも登場していました。

障害者の政治や公的活動の保障は公民権や市民権の問題として重要です。同様に、労働場面においては労働基本権(団結権、団体交渉権、団体行動権)の保障が重要です。しかし、それを障害者の尊厳の問題として明確に主張する論文を私は見たことがありません。

障害者権利条約第27条 労働及び雇用
(c) 障害者が他の者との平等を基礎として労働及び労働組合についての権利を行使することができることを確保すること。

就B事業所や中間的就労で働く障害当事者の問題はさておき、雇用型である就A事業所で働く「利用者」さんは明確に「労働者」です。私たち支援者は権利条約27条を意識しているでしょうか?その前に、支援者には労働組合についての知識と経験があるでしょうか?障害当事者の政治・公的活動の保障に支援者側の政治的、社会的教養が問われるのと同様に、障害当事者の労働の保障には支援者側の労働に関する教養が問われます。連合って何?合同労組って何?労働組合って怖い、自分とは関係ない、では社会福祉の仕事はできません。これまでもディーセントワークを特集してきたさぽーとには、ぜひ障害者の労働問題を特集してほしいと思います。(林)